9月の別名は長月(ながつき)。日本において9月は夏から秋へと季節が切り替わる時期だ。日没が早まって、日ごとに夜が長くなることから「夜長月(よながつき)」と呼ばれるようになり、それが略されて長月になったとされている。
9月といえば、月見のシーズン。日本には昔から月を愛でる文化がある。今回の記事では、日本人の月に対する感性や月見の楽しみ方についてご紹介しよう。
月見とは
月見とは、月見とは月を鑑賞して楽しむこと。毎月15日の月を「十五夜」というが、特に旧暦の8月15日(現在の9月中旬~下旬頃)の月は一年で最も美しいとされ、「中秋の名月」と称えられた。中秋とは秋の真ん中を意味する。
月見はもともと中国で行われていた行事で、859~877年頃に日本に伝わると、平安貴族の間で流行した。貴族たちは月を眺めながら酒を交わし、船の上で詩歌や管弦を楽しんだという。当時の月見は、月を直視するのではなく、水面や酒盃に映る月を見て楽しむのが風流とされた。
こうした月を愛でる風習が庶民の間にも広がったのは江戸時代に入ってからだ。ちょうど秋の収穫期と重なるため、豊かな実りに感謝する意味も加わり、月にお供えをしながら来年の豊作を願う風習へと変化した。
現代の月見は、感謝祭としての意味合いは薄れてきたが、自然に親しみ、秋を楽しむ行事として定着している。
日本に伝わる「月うさぎ伝説」
日本には月にまつわる不思議な言い伝えが数多く残っている。その一つが「月にはウサギが住んでいて、十五夜になると餅つきをする」というものだ。
この月にウサギがいるという伝説は、インドの説教仏話がもとになっている。どのような物語なのか簡単にご紹介しよう。
「昔、あるところにウサギとキツネとサルがいた。ある日、疲れ果てて飢えた老人に出会い、3匹は老人のために食べ物を探す。サルは木の実を、キツネは魚をとってきたが、ウサギは懸命にがんばっても何も持ってくることができない。そこでウサギは自分の身を食べ物として捧げるべく、火の中に飛び込んだ。実はその老人は、彼らの行いを試そうとした神様だった。神様は心優しいウサギを哀れに思い、月の中に蘇らせた。」
ウサギが月で餅つきをするのは「老人(神様)のために餅を作っている」「ウサギが食べ物に困らないように」などいくつかの説がある。
月の表面に浮かぶ模様は、国や地域により、さまざまな見え方をされている。みなさんもぜひこの機会に、夜空の月を眺めて、餅つきをするウサギがいないか探してみてはいかがだろうか。
月見・十五夜の楽しみ方
ススキを飾る
イネ科の多年草であるススキは、日本では古くから秋の風物詩として親しまれ、月の神様を招く依り代(神霊がよりつく対象物)として考えられてきた。本来、米が実る稲穂を依り代にすべきだが、月見の時期にはないため、稲穂に見た目が似たススキを飾ることで神様への感謝の気持ちを示す。また、ススキの鋭い切り口は、魔除けの意味も持つ。
月見団子を作って食べる
穀物の収穫に感謝して、米の粉を丸めて作ったのが月見団子の始まりだ。丸い団子は月に見立てて作られている。月見団子は当日に作って月の神様にお供えしたあと、月を見ながら食べるのが一般的。お供え物を体内に取り入れることで、健康や幸せが手に入るといわれている。
月見酒を楽しむ
月見酒とは、月を愛でながら飲む日本酒のこと。平安貴族さながらに、秋の夜長を優雅に過ごすのも粋なものだ。
限定メニューを試す
日本では毎年月見の時期になると、月にちなんだファストフードやお菓子が販売される。なかでも、マクドナルドの「月見バーガー」は有名だ。月見シーズンに日本を訪れる機会があれば、チャレンジしてみてはいかがだろうか。
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