岐阜県北部に位置する高山市は、飛騨地方の中心であることから一般的に「飛騨高山」と呼ばれている。江戸時代以来の城下町・商家町の姿が保全されており、「飛騨の小京都」とも称される趣深い街だ。仏ミシュランのガイドブックでは「日本の原風景を残す街」として紹介され、3つ星を獲得した。今回は、そんな飛騨高山の魅力に迫ろう。
飛騨高山の歴史
日本列島のほぼ中央に位置する飛騨高山は、東西を山々に、南北を河川や峡谷に囲まれた自然豊かな場所に位置する。大部分は山地で農業は振るわず、これといった特産品もない小さな山村に過ぎなかった。
奈良時代に税制が確立し、地方の国々は朝廷に米や地元の特産品を納めることになったが、貧しい飛騨の国はそれらを免除される代わりに、都へ行って宮殿や寺院などの建築工事に携わる労役が課せられた。彼らは優れた技術を持っていたので「飛騨の匠」と呼ばれ、都で珍重された。現在でも飛騨地方には腕のいい職人が多く存在し、匠の技が受け継がれている。
のどかな山里が大きな変貌を遂げたのは、江戸のはじめのこと。戦国時代に織田信長、豊臣秀吉、さらには徳川家康に仕えていた金森長近は、関ヶ原の戦いでの軍功が認められ、飛騨国3万8000余石を得て初代高山藩主となった。長近は城を築くと同時に、城下町の整備にも着手。京都に倣って碁盤目状に城下町をつくり、東山に寺社の建築も進めた。これが現在、高山が「飛騨の小京都」と呼ばれるようになった所以である。元禄5(1692)年以降、飛騨国は天領(幕府直轄領)となり、商人の町として発展を遂げた。
京文化、江戸文化を取り入れながら独自の文化が花開いた飛騨高山。今もなお、その街並みには当時の風情が色濃く残っている。
飛騨高山のおすすめ観光スポット
古い町並み(さんまち通り)
飛騨高山のメインストリート。江戸末期の町家や商家が軒を連ね、風情漂う町並みが楽しめる。和雑貨の店やカフェなどが並び、多くの観光客で賑わう人気の観光スポットだ。醤油味のみたらし団子や飛騨牛の握り寿司など、食べ歩きグルメも充実。
朝市(宮川朝市・陣屋前朝市)
江戸時代から続く飛騨高山の朝市は、日本三大朝市の一つ。現在、朝市が開かれているのは「陣屋前朝市」「宮川朝市」の2ヵ所で、ほぼ毎日のように新鮮な野菜や果物、地元の特産品などが並ぶ。地元の人たちの純粋な「高山ことば」を聞けるのも楽しい。
高山陣屋
江戸幕府が飛騨国を天領として管理するために設けた郡代・代官所(陣屋)。幕末には全国に60ヵ所以上あったとされる郡代・代官所のうち、主な建造物が現存しているのは、唯一この高山陣屋だけだ。高山陣屋前の広場では、朝市も開かれている。
飛騨大鍾乳洞
1965年に地元の実業家、大橋外吉が発見した観光鍾乳洞。標高900メートルの場所に位置し、日本一標高が高い場所にある観光鍾乳洞として知られる。学術的に価値の高い「ヘリクタイト」や「ウミユリ」「フズリナ」などの化石が発見されている。
飛騨高山とあわせて訪れたい白川郷エリア
飛騨高山の地を訪れたのなら、世界遺産に登録された白川郷まで足を伸ばしてみてはいかがだろうか。白川郷は岐阜県の庄川流域を指し、伝統的な合掌造りの家屋が点在する集落。日本の原風景を今に残す貴重な場所となっている。どの季節も魅力があるが、冬の雪景色の美しさはまた格別だ。1月、2月には夜間のライトアップも行われている。
岐阜県にある飛騨高山は「飛騨の小京都」と呼ばれる歴史的な街並みが残るエリアだ。町を歩くだけで、江戸時代にタイムスリップしたような気分を味わえる。ちょっと足を伸ばせば、世界遺産・白川郷や日本三大名泉の下呂温泉など魅力あるスポットがたくさん。日本の原風景と豊かな大自然をぜひ堪能していただきたい。